本日の作業は遺品整理です、東京都杉並区のT様邸昭和中期ごろに建てられた家で、その家にはもう誰も住んでおらず、個人の物が放置されている。
その方が入院されてからすでに数年。家の中の空気は止まっている。
本日は依頼者様が最後までみとどけたい、とのことで私たちの作業をしている姿を息を詰まらせるような表情で眺めていた。
私がタンスの中を整理していると中から着物が沢山出てきて、それを見て依頼者様が話しかけてきました、
「この着物を買い取って頂くことはできないですか?買ったときは結構な値段だったんですよ」
「身長は何センチくらいでしたか」
「たしか150センチくらい」
「昔はそれぐらいが平均だったみたいですね。今じゃ、平均は160センチぐらいになってしまったから、150センチの着物は売ることがとても難しいんです」
袖には着用後の汚れ白かったはずの胴裏は茶色になり、私が胴裏の変色を開いて依頼者に見てもらう
「とても素敵な柄だし買われたときは高かったとおもいますがこの状態だととても難しいです」
故人が残されたもの。私はこの仕事をはじめて考えたことがあります、私が死んだとき何を残すんだろうきっと私の家族が私の遺品を整理するときに何か価値のあるものが残っていればいいのだが、何かこの世に価値のある物を残して死にたい。
ある時私は気が付いた、その日の仕事無事にを終え家の玄関の扉を開いたその瞬間に元気な声でパパーおかえりーの後のハグ私はもう残していた日本の宝であり世界の宝物を。